冬へ 夜へ
木立 悟





霧の音を
水の音が割り
沈む虹を追う
流れない冬ばかりを
追う



ゆうるりとうすいまばたきが
冬の窓をすぎてゆく
内と外は
眠りながら見つめあう


火の粉 火の粉
行方なき胸
風を産む日
風を産む日


巨きな熱が寝返りをうち
みしみしと淡く朝になる
重なる楽器 沁み出す水
鉛の記号に横たわる



冬は高い道 高い道
目をつむって通る
見えないものと
手をつないで通る



うしろから うしろから青になる
空の静脈
冷えてゆく音
底の底の青


ぽつりぽつりとつづく水の譜
風の背 風の穂をわたり
しあわせを望まぬものの数だけ
人造の冬に座して



木の上で雪が泣き
夜が来ていた
ゆらめくもののなかで
火と花と
手のひらの名を呼んでいた































自由詩 冬へ 夜へ Copyright 木立 悟 2011-02-07 21:11:07
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