生まれたての詩人たちへ
ホロウ・シカエルボク
鈍器で殴打し続けて骨に空く孔のような
錆びた鋸で引き続けて引きちぎれながら切断された腕か脚の断面のような
嘔吐されたあと風に冷え道に汚れて黒く濁る動脈の血液のような
脳味噌は日常の中で音の無い瞬間を探し続けている
君に送った手紙はカラフルでポップだけれど一番鮮やかな赤色には俺の血が混じっている
文章は丁寧だけれど心魂に浸すと毒を放つ
それは君の体内のいくつかを鮮やかにしいくつかを曇らせる
その現象によって君の体内にはいくつかの変化が訪れるかもしれない
飲み込んでしまわなければたいていのことは理解なんか出来ないものだ
仕掛針のような旋律を描きたい、君がそれをどう思おうと
それは必ず深みに突き刺さるのだ、そうして
メッカを目指す信者のように君の心魂にたどりつくのだ
君の心臓の鼓動に合わせて、君の筋肉の振動に合わせて
いつか誰かがこの俺の耳元でそんなことを囁いてくれた
俺はそれを動脈に誘導して心臓に届けた
心臓でそれは形を変え…少なくとももう二度と流れに乗ることはないようなものに
そのまま俺の心室に留まった、全身で碇となる断固たる船のように
それは俺にあらゆるものが混然一体となっていることを教えた
どれかひとつに限定して語れるものなどこの世にはないのだと
つかみどころのない状態こそが一番正直な状態なのだと、正直な状態なのだとそう語った
不必要な道など定めようとするなと
それがある場所をそのまま歩けと
言葉など所詮は大いなる現象の一部分でしかないのだと
それは現象に最も近い嘘のようなものでしかないのだと
だから語るべきことを決めてから語り始めるような真似だけはするなと…
「それはお前のステイタスになるかもしれない、だけどお前の真実には決してなりはしない」
そんな風に話しかけていた
言葉になど何も出来はしない、だからこそ言葉を使うのだと
それは決して徒労に終わることはないのだと
だからこそ言葉は果てしないところまで弾け飛ぼうとするのだと
身体のなかを走っている血管をひとつの直線的なパイプにして
その先端から吐き出される血液の飛距離なのだと
あるがままのなにかを語ろうとするなら魂を射出するための銃口にならなければならない
少しでも曲がると暴発してしまうのだ
ぶるぶると放たれるのを待っている言語
弾丸と呼んでしまうにはナイーブに過ぎて…
それは直情的だとか直線的ということではない
まっすぐな軌跡にはまっすぐなことしか語ることは出来ない
撃ち出された魂は勝手に軌道を変えてゆくから、考えるのは撃ち出すまでのことだけでいい
グリップの持ち方次第で射出速度だって変化する
ゆっくりと撃ちこんでゆっくりと効いてくる、そんな弾だってある
あらゆる激情が口径の広さを表現するわけじゃない
そう、それは針のように動脈にたどりつく場合だってあるのだ
ただ叫ぶだけを考えるなよ、生まれたての詩人ども
音も立てず石を置くように熱を放つ
そんな叫びだって
遠くまで届くのだ