ハキリアリにおもう
石川敬大




 農業をする蟻ハキリアリをみていた
 福山雅治が
 素っ頓狂な声をあげた
 列をなして葉っぱを運んでいる
 きりとった葉っぱをミドリの帆にして巣穴に運んでいる


 蟻の道ができている
 これが、蟻の通勤コースだ


 脇目もふらず一日中なんども運ぶ
 ひとみたいに勤勉だとおもう
 つぎの日もまたつぎにつづく途方もない勤勉
 いつ果てるともない営みをおもう


 葉っぱや花を栄養分にしてキノコを栽培
 食糧にするらしい、葉っぱは腐って土に帰る


 その営みに蟻じしん
 疑問をもつことがないだろうか
 満ち足りて月を浴び休むのだろうか

 徒労ともみえる営みに
 福山ではなくて
 ぼくの思考が滞ってしまう
 ぼくは巣穴にとらえられてしまう
 偉大なる農業者である蟻ハキリアリの
 運ぶという営みに
 呼応する
 共鳴し共振する
 あれは、ぼくだとおもう


 雨季がきて雨季がさり
 乾季がやってくる


 車ではなく草が発火する大自然がある
 太陽を全身に浴びて横たわる日は
 ハキリアリに
 やすらかな時が
 まっているのだろうか






自由詩 ハキリアリにおもう Copyright 石川敬大 2011-02-06 10:57:09縦
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