JimiH 3
……とある蛙
その褐色の巨人は
毛髪からエレキを放電し
異様な叫び声を上げたり
心を揺さぶる言葉を呟き
その褐色の巨人は
無骨な太い指で
楽器の喉元を押さえ
楽器の内臓を掻き毟って
悲鳴を上げさせ、楽器の悲鳴に酔いしれ
その悲鳴をマーシャルアンプで増幅させていった。
彼の言葉はDylanのたまごだ
彼の言葉はDylanのコピーだ
Dylanがアイドルの彼は
およそDylanとは掛け離れた音の洪水の中で、
Bob Dylanを求め
Bob Dylanになろうと疾走した。
しかし、Dylanには似ても似つかぬ彼は
褐色のBob Dylanにはなれなかった。
彼の創り出した音の洪水は
Miles Davisが嫉妬し、Gil Evansが熱狂した
理論無きモードチェンジを繰り返し
ポリリズムを持つベースラインに乗ったまま
ラウドネスなノイズにまで昇華した。
ノイズにまで昇華された音たちは
時間も空間をも切り裂く
切り裂かれた空間は
まるでサテンのような光沢を持ち、
切り裂かれた時間の裂け目は
ぬめぬめとした肉感的なエッジが見え隠れする。
切り裂かれた時間と空間の裂け目から
Dylanの皮肉と笑いと憂いが顔を覗かせる。
ノイズは天空に向かって上昇し
地獄に向かって突然落下する。
その繰り返しにノイズはうねり、
飲み込んだ聴衆を天空に拡散する。
音の洪水が漸くノイズだけでないこと
世間が知り始めたとき
彼は自ら造った時間の裂け目に落下した。
不思議な重力の漂う空間で時間の裂け目に落下した。
およそ、アイドルには似つかわしくない
吐瀉物による窒息死
たくさんの革新と希望と可能性
そして、まがい物の詐欺師たち
をこの世に置き去りにして
Amen