大好き
吉岡ペペロ
面白いことを言うと部長はわらっていた
目をとじたままわらっていた
腹水がベッドのしたに溜まっていた
なにかの拍子に一部が床にこぼれていた
それはあざやかな黄色だった
ダンディな部長の腹はまだ脹れたままだった
もう2リットルは抜いているそうだ
前歯がぬけているようにみえた
歯がちいさくなっていた
梨のようなひかりを帯びた顔だった
大好きだとことばにして伝えた
うでをさすってそう伝えつづけた
老いて逝くのではなかった
悔しがるのは役目ではなかった
いちびょうでもじぶんの人徳を
この光や空気のなかであじわって欲しい
そんなことすら頭にはなくうでをさすっていた