嘘になる
智鶴
夜の冷たさに嘘を吐いて
僕の感覚を消そうとしているんだね
君は背中を向けたままで
腕に煙を纏わせている
月の影に目を伏せて
海月のような溜息を吐いて
「どうしたいの?」
夢のままで、
白い感情が消えるのを見ていた
何も言わないよ
君が嘘に変えてしまうから
僕の足跡さえ
声でさえ
例えば僕が死んだら
君は僕の死体を抱いて
誰も知らないような
何処かこの街を見下ろせる山頂で
世界の美しさを嘆いてくれるの?
例えば君が歌ったら
世界は静まり返って
人々は皆手を取り合って
誰一人も不幸じゃない
理想郷を作り上げるの?
音もないのに
色もないのに
そこには何もないのに
僕が夢を見て君が笑う
そんな世界が思い浮かぶかい?
何も知らなくていいよ
ただ虚ろな世界を眺めていればいいよ
君が嘘に変えてしまうから
どんな未来も来なくていいよ