戦争だって、にんげんだ
真島正人




けだものばかりではないのだ

けだものにもけだものの
規則というものがあるので
卑下することはできないが
それでも少年には疑問だった

戦争は
どこにあるのだろうか。

本をたくさん読み
股間で気持ちよくなることを覚え
夜にはテントの中に隠れることを学んできたけど

どうにも不安で
仕方がないのだ

コーンフレークに
牛乳をかけて
口にはこぶ時
銀色のスプーンについている
悲しみがないかどうかを手探りで探り当ててしまう

どこか違う記憶に
隠されていた涙が
どうにかして助けを借りて
這い出したいと思っていることと、

本筋や
決められた黄色い色の範囲図の中には
発掘されないところから
泣いている声を
聞き取ってしまえる耳に
生んでもらったから

矛盾だけを
口に放り込んでしまいたいと、
そんな自慰行為を
止められないのだ

少年は、

今あるものをすべて丸くこねて
粘土細工で
対抗しようとした

空気感染を
経路にした教師たちが
少年の首筋に
ナイフを立てて笑った

ガキ大将は
それを見てチビりながらも
少年を助けようとして
勇気のある体当たりをかました

惚けていく、
じかんたち
きのこのような
生物と
黄な粉のような
頼りない砂……

『戦争だって、にんげんだ!』

校内放送が高らかに
宣言をしたとき
少年はその後ろに流れている
「恋はみずいろ」を聞いていた

流れる水ははかなくて
何も知らないふりをしているので

いつかステンレススチールの箱をこさえて
そこに閉じ込めてやろうと

心に誓った



自由詩 戦争だって、にんげんだ Copyright 真島正人 2011-02-01 01:08:43
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