アバウトに睦月
小池房枝

山笑う数多のはだか椿の湯

梢にて野鳥のふりですずめチュン
 
冬型の気圧配置の大海嘯

屋上屋さらに重ねて霜柱

一日を終えて夕日に沈む富士

土曜日は身のうちに海をいれに行こう
 
天心の月下明日のパセリ摘み

葉牡丹をぱしゃりと打って牡丹雪


手のひらを雪に開いてヒイラギナンテン

松の葉の一本ずつに日の光

美味しいね小松菜しゃりしゃりウサギ二羽

目を閉じて開けていっそう青い空

首都高にワカケホンセイインコかな

不忍の白鳥ボートにゆりかもめ

初めての櫂をこぐ子と父の声

おおどかなオリオン街に涅槃像


左義長に出でませ大王具足虫

かじかんだ手をかざしてみるスイートピー

スイートピーあふれてメトロの花屋さん

夕木立小鳥はみんなシルエット

四十雀だろうか梢を渡る声

越冬芽ふくらんで春はマッチ棒

火球して空ガッツンと鏡開き

どんぐりも踏みしだかれて色あたらし


薔薇おいで来年の春はここで咲け

若布干す浜いっぱいに大根干し
 
まだ赤い白梅のつぼみ初詣
 
めでたさや九割引の大鏡

去年今年海から昇る大柄杓
 
星走るアマツキツネの嫁入りの夜

初ペットボトルロケットゆるく墜つ
 
深呼吸胸いっぱいに蚊の柱


カワセミの飛び去るときの背の青さ

カイツブリ深々潜る冬の水

冬日の田ひこ生えももう刈り取られ

花よりも枝瑞々しき春の梅
 
晴れ上がる前の宇宙の色を思う

直角を三つ合わせた柔らかさ

牡ならば雄であろうに冬牡丹

ぽ、とだけ言って指差す。咲いている


パソコンも百年経てば付喪神

年寄りがロウバイと庭に佇んでいる

ぷちぷちと馬酔木は冬も慎ましい

ユキヤナギ緑の硝子の粉を噴く

ぽ、ぽ、ぽ、ぽと、言って指差す。ロゼットを
 
チューリップ寒いねスリッパ履いといで

コクリコもうたた寝こくり、こくりとね

ヒヤシンス冷んやり浸水 春の水


マンサクがまず咲く河川敷畑

這い回る白菜 黙認耕作地

砂利と雪と諸ともに崩すシャベルカー

キセキレイ氷の水辺に翻る

入日野は雀も金色神々し

モズ、君は雪野に何を見張ってる?
 
胸元の羽の白さを散らす空

スピカスピカ寒気にそっと震えてな


初春を知って無視してホトケノザ

モクレンが何かの灯り点してる

木々はもう笑ってて春は煙ってる

初富士の稜線空へ翔けあがる

釣り人に少し離れてカイツブリ

足元の水の日向に稚魚の群れ

さみしさもさみしいらしい またおいで

モニターの「鷹女」が「魔女」に見えました


俳句 アバウトに睦月 Copyright 小池房枝 2011-01-31 21:21:48縦
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