惑乱
蒲生万寿

花散る郷に住む君は
夢見る頃も葬り去りて
ただただ路傍の石の如く
硬くなり逝く

木枯らし吹き曝す郷に住む君は
昔日の彼方に迷い込み
失くしたものを
いざり漁る

真冬の郷に住む君は
春を待ち侘び待ち侘び
未だ根雪の下深く閉ざされ
来るはずの温もりを信じ
その日々を暗がりの中で
過ごすばかり

今生に居合わせた我等
淡き儚き一生に
どれだけのものを求めるか
逃れることなく安住する嘘臭さよ

盲(めしい)ほども見えぬ世界に
生死(いきしに)を決め付けて
澱み沈み落ちるのか

郷の季節は移り行く
美しき余韻を
無碍に残して
慈悲の姿を素直にとれぬ
浅ましき我等を残して



自由詩 惑乱 Copyright 蒲生万寿 2011-01-31 18:53:18
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