破棄
ayano







叫び声を聞くと私は涙が出てしまう。どうしたって。怒鳴り声が自室まで響いて、開かれた場所なのにずっと立ち止まっている。私を気に留めないで、一緒に住まないで、見たこともない汚い顔で怒らないで。あなたは綺麗。黙っていると綺麗よ。綺麗がわからないけど、魔法の呪文なんでしょ。頭おかしくなっちゃうんでしょ。前屈みで口を押さえては声を血や食事にすり替える魔法。私の口の中にゲロを入れてよ。てのひらに溜めないで素直に出して。沢山の怒りを食べてあげる。どうしたって。涙も暴露され胃液は爆発する。キスとは似てない。新たな接触方法。背中をさすれば増す吐瀉物。かくかく体を震わせて、目に涙をため、嗚咽を漏らし、崩れ落ち、四つん這いで吐いている。汚らわしいなどと囁く暇もなく体内に流れ込むゲロ。まだ足りないまだ足りないと吸い付いて無理矢理吐かせた。私の頬に生温い涙が落ちたことにも気づかずに貪っていた。快感以上絶頂未満。下半身はぐちゃぐちゃに感じまくって時折喘ぎ声を発し直向きに変態を演じショーは終わる。終わればいい。終わらない。あなたのゲロはとっても美味しいわもっと頂戴ねえねえねえねえ!我慢できなくて涎がだらだらはしたなく溢れ沸き上がる歓声に身震いした。おんなのこ同士、いつまでも私たちはおんなのこ。そう在り続けるために行為を見せびらかして、好意を確実に体内におさめる。ご飯は私たち。お金は必要かもしれないけど性はもっと必要。下心があったとしても私たちのゲロは誰にも渡さない。大切な一人だけのおんなのこ。綺麗よ、あなたは綺麗。小さな胸からは出ないもの。いくつ穴があっても、たったひとつ文句を言う口から排出される本音を飲み込んで一緒にいたい。一緒にいる限り解けない謎がひとつ。嘔吐しているときはどうして涙が流れるのかな。かなしくない、うれしくない、たのしくない、きもちいいと泣けちゃうの。見られてると興奮するの。ゲロを飲み込んでる顔がいやらしくて泣いちゃうの。どうしたって。背中をさする手が優しいからと願って願って願って。泣いてると下半身も泣くのかもね。冗談で言ってみても疼きは止められない。ショーが終わったらイかせてあげるねって綺麗な笑顔で囁くんだもの。きれいよ。お辞儀をするときに手を繋いでくれるのも、太股を擦り合わせるのも、幕が降りないのも仕組まれたこと。ゲロを吐きながらエッチな気分になった私をみてください、綺麗にしてください。懇願は永遠に届かない。背中をさする手がどんどん冷えていくのを感じられる私ならよかったのに。










自由詩 破棄 Copyright ayano 2011-01-30 21:50:01
notebook Home 戻る