懐かしい夏
たもつ
鉄条網を飲み込んだまま
息絶えたヘビ
懐かしいものはもう
手の甲に残る夏だけで構わない
「なつかしいなつ」
を逆さに読んでも
「なつかしいなつ」
になる
そんなはずもないのに
しばらく暗唱していると
大切な菓子を地面に落とし
泣いている子の
姿勢が目に入る
その瞬間に視界を遮る
虫の羽音に良く似た
わたしの薄い瞼
自由詩
懐かしい夏
Copyright
たもつ
2011-01-29 20:13:11
縦