ひとつ すべて
木立 悟






夜の震えの先の先
狐は狐にゆうるりと
星の巡りの底をすぎ
同心円の冬をゆく


帯の鬼に触れながら
あたたかさから離れては
鏡の蝶の羽化の裏
葉脈に描かれた音を見る


ふたつはふたつ
空に無い色
並びに流れに属さずに
真昼のままの砂をゆく


崖の塔
指の傷
夜を水へ水へと落とす
めくる指の すぐそばの指


鈍い痛み
醒めやすい耳
海と同じ曇
いくつもいくつも
夜にひしめく


数字が数字にほどけては
亡き人の言葉を羽にする
膝のあたたかさ
残りつづける午後と暮れの夢


ひとつ すべて
おしだまる色
常に見上げ
とおりすぎる色


かぎ裂きの
手の熱
まぶしい片目
夜より高く
器あふるる
器 あふるる


こがねの尾
ひとしずく
ひとすくい
手のひらの冬 まわしゆく






























自由詩 ひとつ すべて Copyright 木立 悟 2011-01-29 20:09:55
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