頑張りや
乾 加津也

頑張りやの
あんな子は二度と来ないでしょうと
しゃきしゃきとわたしの髪は細かく床に散らばる
もともと十二月までの半年契約で
一月からは大阪で開業する先輩の新店スタッフに
あらかじめ呼ばれていたということだった

カット台三つのヘアサロンは しっかり者の
三十代のオーナーひとりでは持て余す明るさらしい
彼女の
こころのこもった洗髪の指感もすぐに思いおこせた

気持ちを同じくして そうですか
さみしいでしょうねと窺うと
さみしいですねと笑う気丈さ
大きな鏡の向こうでうんうんと
オーガスタもうなずいていた




自由詩 頑張りや Copyright 乾 加津也 2011-01-28 17:17:42
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