川の街
シホ.N
僕らは川のほとりに住んでいて
いつも水の匂いをかいでいた
時に異臭もはなつ水たちは
うす汚れたコンクリートの壁の下
木陰にくらい公園の横をくぐりぬけ
存在感なき音をたてながら
流れつづけたものだった
僕らはいつも川に沿う
熱いアスファルト道を歩いてた
排気ガスに汚れた空気
川べりの朽ちかかった木造家屋
憂欝な人の蹴り入れた
小さな石の小さな波紋
まったく街は病んでいる
しかし僕らは夕暮れに
一種詩的な風景を
ふいに見つけてしみじみともした
唯物的に生きてもいるが
動めきうねる川の街のこの貧弱な感傷
四畳半の窓の下を流れる川の水の色は
見るたび悲哀に満ちていて
僕らは独りなのだ
と
いかにも安易な孤独意識に
僕らをいざなうものだった