水中都市
森の猫
久しぶりにあったJは
北の都市に住んでいるものとばかり
思っていたが
意外
都内の桟橋に車を止めた
???
はて
この先は海だ
と フェリーのような
車一台の乗る
船が埠頭に現れ
そのまま
車で乗り込む
水が浸入することもなく
ものの15分もすると
小さな街に着いた
欧米にある田舎町のようだ
舗装された車道の外は
緑の芝生で満ちている
Jの1戸建てはちいさな
ガランとした2LDK
家具がほとんどなく
カーテンもない
殆んどオープンだ
照明をつけると
外から丸見えになる
J宅のベランダから
外を見る
海?
いや
空?
空ではない
上に水面が光っている
ここは水中であった!!
びっくりした?
一応ここは 都下なのよ
とJは 笑って言った
同じマンションに住んでいた頃の
J宅は家具であふれていたのに
信じられない
よほどの
心境の変化なのだろう
転勤が決まって
ここの新規募集を目にしたのよ
水とかどうなってるの?
水道代 高いでしょう
あたしは一番大事な空気のことは
忘れて (ちゃんと呼吸できていたから)
海水=塩水のイメージで
変な質問をあびせる
前と変わらないわよ
と 洗面所に続く暗い扉の陰に
人の気配がした
黒い影
誰かいる・・・
オープンになったリビングに行ってみると
男の靴跡が無数に付いていた
人がよこぎって歩道へ出たようだ
Jの顔が翳った
ナニカ アルのだ
やはり
こんな未来都市には
曰くが
都がね
試験的に作った街なのよ
でもね・・・
あたしには少し
霊感がある
勘は当たった
夜になると
黒い影は頻繁に出没し
眠りにつくどころでは
なかった
ここは
海の底でしょう
っていうことは
水死した人たちの
霊魂の溜まり場でも
あるらしいの・・・
たまたま
J宅がその霊魂の
通り道になっているらしいのだ
こんなに素敵な 眺めなのに
空が水面で藍くて
ゆったりしたながめは
さぞや癒される空間だろうに
だれも通報しないのに
翌日には
街のおかかえ祈祷師が
どやどやと
やってきて
除霊をして 帰っていった
水中都市かぁ
あたしは
Jに送られ
また
あの埠頭まで戻った
ふと 携帯を見る
あっ!
一晩しかいなかったはずが
三日先の
日付を表示していた