あなたはあなただ
真島正人
あなたはあなただ
小さな町の
夜の路地を
うろつきまわる
寂しくって仕方がない
土の匂いを携えて
遠くの駅では
手持ち無沙汰で
違う国の言葉を
しゃべってた
あなたはあなただ
ずっと前
初めて都会に出てきたときに
見知らぬ乞食に
声をかけられ
小さなお金を
ねだられた
夢を追ううちに
幻は膨らんで
正義という服を着た連中が
それを眠らせてしまったよ
あなたは
さっきからずっと
手のひらをじっと開いて
それを見ている
何が見えるのかは
聞かないよ
白州の
水割りにしたグラスの氷が
次々に溶けていく
大げさなことを
しゃべりすぎ
あなたの恥じらいを
昔と同じように取り戻す
生きている間眠っているのか
死んでから眠るのか良くわからない
八百屋で安く売られていた
ぽんかんを
口に含んで
すっぱいと、言った
真夜中の駐車場は
広すぎて
まるで
記憶の貯蔵庫のよう
芸術の好きな
人がいたら
なにか
映画を撮っただろう
あなたはあなただ
あなたの髪が
全部ぬけてしまったとしても
白々しい朝が来るごとに
僕は闘い
あなたとの的確な
距離を探る
僕の中であなたの
存在が膨らみ
いることと
いないことは
交換される
吸い込む空気が
吐き出す空気と
仲良しさんだと
思えば良いだけなんだ