フレンチ キス
森の猫
駅前ビルの本屋さんで
デート
洋画の「恋に落ちて」みたい
夢にみていた
本屋で落ち合うこと
でも
あたしたちは
この時間を最後に
しばしの
さよならだ
頭がクラクラする量の本の多さ
ワンフロアーでこれだけの
本屋も少ない
本を選ぶ
貴方の横顔は
素敵だった
君も勉強しなさいな
いいの あたしはこっち
新進の女性作家の
恋愛小説を選ぶ
また それかぁ
呆れ顔の貴方
いよいよ
電車の時間が迫る
あたしは
貴方にくっついて
はなれない
待合所でコーヒーを
飲みながら
サンドイッチを
ふたりで分け合って
ほおばる
楽しかったね
うん
あっ!
何っ?
お別れのキスするの
忘れた
あたしは
しれっとして言った
エスカレーターで
上のホームに上がる
待って
煙草 買って来る
もう あと5分なのに・・・
走って戻ってきた
貴方は
煙草ではなく
小さな ストラップを
手にしていた
ハイ これ付けてね
ありがとう
・・・・・
貴方は
人目もはばからず
あたしの頬にキスをした
かるく
あったかい
貴方のくちびる
あたしは
指定の席に着く
声の聞こえない
閉まった窓の向こうで
貴方はおどけて
両手をふっている
あたしは
嬉しくて 笑いながら
キュンとなる
Bye−Bye
またね
また 会おうね
初めての別れのキス
胸は熱く
涙があふれた