クレヨンの月
アラガイs


部屋中のガスを抜きたくてそっと窓を開ける
ぽっかりと、東の夜空に浮かぶクレヨンの月が、 あたたかそうな顔をしてひとり笑ってた 。
(わたしもすっかり旧くなって)新しくなってゆく校舎の土に埋もれたままの骨。
朝になって誰かに発見されたとしても
確かにおまえが過ごした思い出だと
あのポプラの根っこは覚えていてくれるだろうか 。

この風は北欧から流れてくる乾いた冷たい風
ベルリオーズのサムソンとデリラを歌う洗練されたオペラ歌手の声
(あれは)音程をはずした朝が教室に響いた
なつかしい愉快な声
像(かたち)あるものはいつか消え
人々は思い出と引き換えに何かをそっとしまい込む 。
あの旧い校舎の土の下
わたしのひとりが確かに埋まってる
ポプラに寄り添う吹きだまりは小さな影法師
刻みつけた名前も、方解石の染み跡も
寒い夜空に浮かぶあたたかな月
)
月はいまでも画のように覚えているはず 。







自由詩 クレヨンの月 Copyright アラガイs 2011-01-22 23:55:49
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