ダイアグラム
ホロウ・シカエルボク
排気ダクトから零れる風が
冬のうたを口ずさんでいる気がする
カラのジンのボトルみたいな太陽
アクロバティックな性格のクラウド
川の流れはゆっくりで
救急車は先を急いでいる
腰の曲がった老婆は限界を受け入れていて
その脇をすり抜けていく若者達はすべてを過信している
青いシグナルは点滅を繰り返す
信号待ちの似たようなフォルムの鉄の猪
ボリューム・ノブをMAXにまで回しているカー・ステレオから延々吐き出されるのは
往々にして耳に留める価値もないようなものばかり
真っ先に車道を横断するのは口笛のような風
オフィス・タウンにそびえるビルは大きなガラスのシールドをまとって
外界の存在を決して受け入れない
日中の歩道はゴースト・タウンに似ていて
外回りのゾンビ達がビル風に巻き上げられている
駅の近くのアイスクリームの屋台で
スレンダーな女がポータブル・ラジオで聴いていたレッド・ホット・チリ・ペッパーズ
それは1月の空の下で
多分なシニカルとして成り立っていた
俺はアーモンド・チップの入ったバニラを買った
金を渡すと彼女は微笑んだ
きっと彼女が一番理解しているんだ
誰かの下手くそなジョークが世界を作っているってことに
派手なペイントを施した列車がホームから滑り出す
出発するために誰もが旅行の計画を立てる
動き出した瞬間にすべてが終了している
本当にどこかへ行きたいと考えているなら
レールのうねりを聞いているだけにするのが一番正しい選択
鍵を掛けられたゴミ捨て場の前でカラスが佇んでいた
道の向かいのチャイニーズ・フードの店から
時々漏れてくる奇妙な音楽について考えているみたいに見えた
ドミナント・コードについて一番のこだわりを持っている鳥類はもしかしたらカラスかもしれない
なぜなら奴らは一番アーバンな鳥だからさ
また新しい列車がホームに滑り込む
アーチ状のホームの屋根が日蝕を模倣している
足下のアスファルトは仮舗装で
夜通し遊んだ後の舌みたいにざらついている