ホテルニュー上大岡
花形新次

都会の砂漠を疾走する
赤い快速特急を降りると
乾いた風が俺の髪を
グシャグシャにして
改札を出ると
いつものように彼女が
つまらなそうに
俯いて立っていた
視線を上げて
俺が視界に入ったとき
彼女の顔の翳りが
一瞬のうちに晴れるのを見て
俺はとても深い喜びを感じたものだ
それももう昔のこと・・・
今では少しだけ口元が上がって
笑顔らしきものをみせるだけ
俺は考える
もう何もかも終わってしまってるんじゃないか?
いや、終わらせなければならないのじゃないか?
心の中で繰り返し呟く、が
結局答えを出すでもなく
とりあえず
ややこしいことは考えないで
ホテルに行くことにする

顔の見えないフロントのおばあさんに
 「ワインを持ってきて下さい」
と俺は言った
 「1969年からここで働いているけどねえ、
 こんなホテルでそんなこと頼んだのは
 あんたが初めてだよ!アホか!」

ようこそ
ホテルニュー上大岡へ
ここはステキな場所
休憩は二時間で6千円
ホテルニュー上大岡は
行きは二人
帰りは一人
なんてことはお断り

最後に俺が覚えているのは
ぼや騒ぎが起きて
非常口を探して
慌てふためいていたことだ
彼女は部屋の中から
大声で俺に向かって叫んだ
どんなことがあったって
ここから逃げることは出来ないのさ!
乗り捨てることなんて出来ないんだよ!











自由詩 ホテルニュー上大岡 Copyright 花形新次 2011-01-21 05:38:43
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