誰かが朝を呼ぶたびに
ひっそりと佇む夜は震えて
おびえる仔猫の背骨は軋む
もう少しだけ闇を含んだ唇で
触れられていたら
いたんで汚れた指先も
傷付けることはなかっただろう
震える手を隠すために組んだ腕が
拒んでいるように見える夜には
氷点下に閉ざされた清明の
声ではない音を聴いて
貫くものは刃だけではない
やわらかな皮膚を蝕むようにある
このぬくもりもまた
沈黙より雄弁に追い詰める
すべての言葉に意味があるというのなら
それは各々に課せられた宿命なのだろう
気まぐれな風
遠くに花が咲いたことを知らせる
飛び立つ鳥たちが描く一筋の影を抱いて
幾千のさかさまのうつつの
またたきを旅して
書き綴る古びた記号の連なりが
まだ見ぬ音楽になるように