懐古する自動人形
salco

カシオペアってどれだろう
懐かしい北斗七星は何処だろう
オリオンの一角も捉え得ぬ眼球は
地面に転がって冷えている
でも、宇宙はもっと寒いんだよ

?昭和の音?という玩具がある
夕景のフィギュアの釦を押すと、焼き芋売りやら
金魚売りやら豆腐屋のICチップに内蔵された呼び声が
遠くの電車の音みたいに流れる
こんな代物にさえ、大人は回帰願望を揺さぶられる

曰く、
昭和は路地に匂いと声が詰まっていた
豆腐は鍋持参で買いに行き、
突っかけを履いた母やおばさん達はいつもおんなじ服を着ていた
生活の手触りがぬくもりを持っていた時代
いや、あれは私の家族のぬくもりだったか

私は一体何歳の老婆になったのだ?
暗闇をバタバタ飛んで電線にぶら下がり
冬空と屋根屋根を半分ずつ、逆立ちで眺めているよ
どちらの界隈を懐かしむのだろうね 
家には誰もいないし
宇宙はもっと寒いんだよ


自由詩 懐古する自動人形 Copyright salco 2011-01-19 21:36:26
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