その耐えられない歯痛
アラガイs
〃
歯が痛い 〃 いよいよその痛みにも安定度が増してきたようだ。 少しばかりの体調不良とともに二週間おきくらいにはジクジクと確実に現れる様は、インフルエンザウィルスより質が悪い 。
ほっといたら二日くらいでとれるはずのその痛み、時には薬に頼り、また少々は口に含んだ氷水をとっかえひっかえながらで耐えてきた。
そう、わたしは我慢強さでは負けないのだ 。 いや 単に歯医者が嫌いなだけである 。 卵を飲み込む蛇のように、口を目一杯大きく開いて無防備に構えたあの滑稽な姿、手足を捕られて逃げようにも逃げ出せない。それはもう拷問にも等しく、 考えただけでも脂汗が出てくるものだから (〃先生、 先生、 どうか 痛くしないで 〃手荒な真似はしないで 〃 )などと、内心ドキドキしながら怯える弱さはけっして顔に出すことはできない不安さ。(ほら!はやくドロを吐け!おまえはなにがしたいんだ!)…と、キツい尋問でも待ち受けるかのような、、トホホ…それはまるで囚われ人ではないか。
嘆願する、嘆願しながら 請求書提出してくだい と、急かされる あの なんとも 悲壮で無力な瞬間…トホホ 。
(あの歯医者は下手くそだね 。 先生はいいけどあそこは人が多くて待たされるわ 。 手荒いね、この間はすごく痛かった 。 義歯がすぐに壊れた 。 予約が とれない 。)
痛い! 怖い 痛い 。
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被せがとれてからもう半年にもなる。ぼくの奥歯にはポッカリと空いた火山凹のなかに、崩れ欠けた鉄橋の腐った金属の欠片が貼りついたままで、 (〜冷や ! また水が凍みたぁ〜 )
あーあ 。何処かいい歯医者ないかなぁ 。
まさに トホホ とは 言ってられないのである 。