トマト
kawauso
真っ赤なトマトよ
君はてのひらの上でけだるそうにもたれている
その重さといったら
自分の重力をすべて投げ出しているようだ
冷たい肌をくちびるでなぞるとき
あふれんばかりの水分を湛えた君が
自分の存在だけを信じて
僕をはねのける
いくつもの丸みを帯びた分水嶺を越えてゆき
僕のくちびるはふと泉と出会う
泉はすべてを受け入れるようなやわらかさを持って
赤すぎる肌を水底に沈める
狂わしいほどの若さを持った君が
いつか母のやさしさに目覚めるのが僕にはつらい
だから今
ひと思いにザクリと噛みちぎる