手話言語を基本としたノンバーバルコミュニケーションの講義を
福祉医療系の専門学校でほぼ十五年間ほど続けていた。
その間に出会った生徒一人一人を
鮮明に覚えているかというと覚えきらない現実がある。
毎年、言語を習得し得ていない幼児から
言語理解力を失い始めた高齢者とも
コミュニケーションが可能になるかも知れない講義として
人気のある講義のひとつだったから
一年契約ながら十五年間も、毎年契約更新ができたのかも知れない。
その契約も去年で終わり、更新はならなかった。
学生の減少と資格に繋がらない講義だからと
更新されない理由を説明してはくれたけれども。
「指文字」の普及にフォントを作成しネット公開もし
その時には、少しは学生に評判にもなったけれども
それ以降は際立って役に立てている訳でもない。
遊びながら「指文字」を覚える方法として
【ゆびもじ算数】なる遊びを考案もしてみたが
無限に続く訳でもないのでそれも続かなかった。
「い」+「あ」=「や」
「き」−「い」=「ち」
「あ」+「ひ」=「れ」
「る」−「れ」=「せ」
「う」+「あ」=「る」
「し」−「せ」=「む」
・・・
「指文字」を覚えてなければ答えられない問題を
考えられるだけ考えて筆記試験に出していた。
試験時間の後半には
実技問題として「指文字」の解答を手話で表現してみたり。
試験問題に取り組みながら、途中で諦めて
机に伏してしまった生徒は
実技から解答を導き出すチャンスを失い再試験が待っていた。
再試験には、千円の受験料金が掛かるのだ。
そんな経験も今年は出来なくなったのだなぁ。
寂しい想いをしていた時に
学生だった生徒の一人が講義が無くなった事を
何処からか知ってメールを送ってきてくれた。
その中に【ゆびもじ算数】がひとつ書いてあった。
卒業して今は保育士の仕事をしています。
先生の講義は、私にとって今
本当に貴重な経験になっています。
ありがとうございます。
先生が教えてくれたこと、「や」+「ひ」です。
「や」+「ひ」を、教えたことはない。
きっと、自分で考えたのだろうと
自分の掌を見ながら「や」+「ひ」を形作ってみた。
すると
そこには
世界共通の手話サイン
「I LOVE YOU」が現れていた。
・*・〜・*・〜・*・〜・*・
「ゆび文字フォント」
参照:
http://ichigyo.web.fc2.com/yubimojifont.html