十五年間続け終えた講義のこと
板谷みきょう
さて
「手話を基本にした
ノンバーバルコミュニケーション」って
一体どんなんだろうと
前回思った人も居たと思いますが
二講目の今日は
テキストを使います。
手元に札幌聴力障害者協会から
出版されているテキスト
「さっぽろの手話」がありますか。
はい。解りました。
ところで、先週の一講目に
出してた課題。
宿題ありましたよね。
皆さん。
考えてきてくれた?
本当?
えーと。
「浜田広介」が書いた「ないた赤おに」に
出ていた『青鬼』は何処に居るのか
それが宿題だったよね。
この一週間、本気になって相談しながらでも
真剣に、みんな考え抜いてくれた?
じゃあ。
レポート用紙を集めてから
この問題の答えを発表します。
はい。
「ないた赤おに」に登場した青鬼は何処に居るか。
実は、これには答えなんてないの。
否、答えは一人一人が考えた数だけある
って言えば良いかな?
えーっ!
ずるくないですよ。
あなた達は、何にでも
ひとつだけしか
決まった答えがないとでも思ってるの?
違う。違う。
今までの学校では
そう教わったのかも知れないけれども
それは考える力を育てる為のモノさ。
社会に出たら
答え合わせなんてないんだよ。
自分で考えたことが
即ち自分の答えになるのさ。
ボクの出した問題の答えを言います。
青鬼が何処に居るかを
この一週間、真剣に考えた人の心に居ます。
何処に居るかを胸を痛めて想った人
眠れない位に行方を捜した人
そんな人の心の中に住んでいます。
この学校を卒業して社会に出たら
あなた達は赤ちゃんからお年寄りまで
人に携わる職業に付くと思います。
だからこの学校の福祉科を選択したのでしょう?
否、
最初から、そんなに真剣に
選んだ訳じゃない人も居るでしょう。
でも、此処を卒業して
教育、保育、福祉、医療の現場で
仕事をするようになった時に
色んな困難と出会います。
そんな時に、自分の心の中に
青鬼が住んでいることを思い出して下さい。
そのことを、思い出すだけで
青鬼は、きっと
色んな助けを出してくれるはずだからです。
ボクの心の中にも青鬼は居ます。
だから今日もこうして
あなた達の前で講義をすることができるのです。
今は
気が付かなかったり
解らないかも知れませんが
これからのあなた達ひとりひとりの心に
青鬼が育つことを期待して
テキストを使いながら
講義を始めたいと思います。