ストーカー
鵜飼千代子

            ハーモニカの小さなキーホルダー
            
            これ 読んでみない?
            と
            「クリームレモン」を貸してくれた
            高校の同級生が
            誕生日にプレゼントしてくれた

            かわいーと
            ページをめくっていて
            突然吐きそうになったことを
            彼は知らない

            それ絶対一度吹いてからくれてるから
            捨てたほうがいいよ

            友達は言ってくれたけど
            それは心を踏みにじるようで
            出来なくて

            大学の学園祭で
            何年ぶりかにばったり会ったとき
            一方的に送って来る手紙では
            やたら媚びていた彼は
            まるで
            もと彼女のような馴れ馴れしさで
            高校時代のわたしの事を
            あの時こんな服を着ていただとか
            洋服のローテーションの話なんか
            自分の味付けで嬉しそうに話していた

            性欲が服を着て歩いているようで
            男はみんな汚らわしく見えて
            吐き気と寒気で
            倒れそうになった

            いまならきっと
            猫の髭のような敏感さで選り分けて
            受領拒否で送り返して
            いるだろう



          1999.07.12.  YIB01036 Tamami Moegi. 
          初出 NIFTY SERVE FPOEM


自由詩 ストーカー Copyright 鵜飼千代子 2011-01-17 22:43:26
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