いそぐひと
恋月 ぴの

ここ数日来の寒波で凍てついた地下鉄の連絡通路に
場違いとも言えそうな親子連れの姿

乳母車を押し歩くお母さんの脇には小さなおんなの子
お母さんの手助けと押すのを手伝っているようにみえるけど
やっぱ乳母車にしがみついているだけなのかな

ついこないだまでは自分の指定席だったのに
快適な乳母車のなかは産まれて間もない弟に占拠されてるし

おねえちゃんなんだから

生きるって、望もうと望まざるとに関わらず
誰かに押しつけられた役柄を演じないといけないんだよね

お母さんの歩調に合わせて歩くのはしんどいし
見知らぬ場所でおいてけぼりは怖すぎる

昔だったら乳のみ子はねんねこで背負って
幼子の手を引くのだろうけど
OLさんみたいなヒールの高いブーツじゃおぶったりはできない

外国製のおしゃれな乳母車に
バーバーリーとかの高そうなカシミアのコート
以前勤めていた職場の同僚にでも会ったりするのかな

お母さんはますます急ぎ足になって
おんなの子は足をもつれさせながら乳母車にしがみついて

ころんで怪我とかしなければよいのだけど

自動改札を抜けると振り返って親子連れの姿を探してみれば
最後の楽園へと通じるエレベーターの扉が閉じた





自由詩 いそぐひと Copyright 恋月 ぴの 2011-01-17 20:15:10縦
notebook Home 戻る