思考のシンク、そこを流れ落ちる渦巻き
ホロウ・シカエルボク




轟音の中を君と駆け抜ける刹那に見る未来のような輝き、いつだって俺は考えていた、いつだってそうだ、行きつく先は未来でありたいと―留まって同じことを繰り返しながらいかにも進化しているみたいに見せる道化になんかどんなに落ちぶれてもなりたくはないと、そうさ、おいしいものの匂いに集ってばかりいる乞食みたいな真似はもうやりたくない、俺は詩人などという称号が欲しいわけじゃない、そんな風に呼んでほしいわけじゃない―ただ書いて、読んでいたいだけなのさ…よう、ずいぶんと気分がいいだろう、引用した誰かの名前みたいな気分で毎日を過ごすのは?だけどそれは君をどこへも連れて行きはしないぜ、それは君を同じところに縛り付けるだけのものさ―トラディションはスピリットのみ引き継がれなければならない、それは決して「そう書いた」なんて記録のことじゃない、君は本当に気付かないのか、君が安住している世界の薄っぺらさを…受け取り方が全く間違っている、ピッチの出来不出来でストーンズを批判するようなもんだ、君のやってることはすべてとは言わないがおおよそ間違っている、しかも君の真摯さがそれに拍車をかけている、言うなれば君は、間違い続けているのだ、ようは考え方ひとつさ、そんなものいくつからだっていくらでも修正出来る、脳味噌が生きてさえいればいくらでもさ…思考のシンクにギュウギュウに詰められた栓の鎖を掴んで引っこ抜くのさ、心地よい音がして君は思考が呼吸しているのを知る、いままではギリギリで空気が通り抜けていたことをその時初めて実感する、判るだろ、形式なんてどんな世界でも決して自由とは結びつかないものさ―誰に教えられたんだい、誰に批判されたんだい、「間違ってる」って言われるのが怖かったのかい、そんな風に言われるのが怖くて、安全パイばかり選んでいたのかい…そんな風に考えるのがいちばん愚かなことだっていうのに、そんな風になにかを選ぶことが一番愚かしいことだって気付けなかったなんて本当に君のしたことは哀れなことだよ…制限してる時点で君は本当に間違ってる、目も当てられないくらい―性器を露出して通りを歩くくらいに間違ってる、時にはそれをエンターテインだと主張する馬鹿もいるけれど―君自身のためにしていることなら今すぐに改めなくちゃ駄目だよ、君自身が生きるためにしていることだって言うんなら、これからも生き残っていくためにしていることだって言うんならさ…君にそんなことを教えた連中がどんなステイタスを手にしていたって言うんだい?それは君にとって光り輝いて見えたものだったのか?なあ、本当に輝くものは絶対に隠れることは出来ない、どんなところにいても絶対に隠れることは出来ないんだ、君が目にしていたものは本当にそういうものだったか?いつかの結論に縛られるのはよしなよ、そんなものもう何の役にもたちはしない、結論は変化していく、大陸のように形を変えていく、こだわりなんて絶対に所持してはならない、それは君をどこにも連れて行かない―君はやりなおさなければならない、君が君に従って生きることが出来るように、君が君の流れのままに新しく始めることが出来るように…轟音の中を君と駆け抜ける刹那に見る未来のような輝き、いつだって行きつく先は未来であるべきなんだ、これは時間軸の話なんかじゃないぜ…現在と同じように未来なんて幻想に過ぎないんだ、時間軸ってもんについて語るならね…時間なんて尺度をアテにすると生身の鼓動が聞こえなくなってしまう、鼓動のリズムにそって生きることを忘れちゃいけない―いつだって行くつく先は未来であるべきなんだ、テキストに書いてあることの全部は無駄話に過ぎないさ、本当にそこに書かれているものを読み取ることが出来なければ…真実は水のように染み込んでくる、そしてそれは君と俺にとって決して同じものではない、同じものであってはいけない、もしも同じに見えるのであれば俺たちが所詮その程度のいきものだってことさ、本当に、水を浴びるように、飲むように…陽の光を浴びるように、肌を焼くように…そうして命というのは繋がれてきたんだ、命の方法はひとつだ、それは命自身ということだ、君は命の根源からやり直さなくてはならない、君が現時点で最も近づけるところからでいい、何度も繰り返していればおのずと感じられるさ、言葉にし過ぎてはいけないよ、決して言葉にし過ぎたりしちゃいけない、言葉を信じすぎるから俺たちは間違えてしまうのさ、所詮こんなもの、ある程度の見当をつけるためのガイドラインに過ぎない、適当に振り回す武器のようなものでなくてはならない、狙いをつけて一発で仕留めるような気構えなんか要らないよ、君がそれを撃ち抜いたかどうかなんてきっと本当は誰にも知ることは出来ないぜ…本当に大事なのは考えを止めないことだ、本当に大事なのは考えを動かし続けることさ、いまこのとき自分が求めているスピードをどれだけそれらしく放りだせるかってことなんだ、すべての宿命はそんな風に書きつけられるのさ、だけどそのやり方はひとつじゃない…君はやり方を改めなくちゃいけないよ、思考のシンクに詰め込まれた栓をえいやっと引き抜けば霧が晴れたようにそのことには気付けるのさ…





自由詩 思考のシンク、そこを流れ落ちる渦巻き Copyright ホロウ・シカエルボク 2011-01-17 01:12:57
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