大の字
森の猫

ひなびた温泉地の
居酒屋で
地酒の熱燗を呑む

まわりは
方言を使う
地元のお客ばかりだ

あさりの酒蒸し
厚揚げ豆腐を
肴に
2合の徳利を
猪口に注ぐ

木作りの梁
温泉の香り
焼いた魚の匂い

それだけで
うっとりして
酔いがまわる

次の1合を
飲み干し

あたしの
アタマは
くるくるしだした

カウンターに
つっぷす

訳の分からぬ言葉を
喋りだしたあたしを
連れが 外に促す

降った雪が少し
残っている

ひんやりした空気
旅の開放感

あたしは
ひろい歩道の三角地帯に
大の字に寝そべった

うとうととなる

連れは
呆れながらも
あたしに手を貸す

 痛っ!

 ん・・・?

酔っ払いの
怪力は
連れの右腕に

青紫の跡を残した


「大の字の女
 温泉地にて
 凍死」

翌朝の新聞に
載った活字を

夢で
見ていた


自由詩 大の字 Copyright 森の猫 2011-01-16 16:58:25
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