大の字
森の猫
ひなびた温泉地の
居酒屋で
地酒の熱燗を呑む
まわりは
方言を使う
地元のお客ばかりだ
あさりの酒蒸し
厚揚げ豆腐を
肴に
2合の徳利を
猪口に注ぐ
木作りの梁
温泉の香り
焼いた魚の匂い
それだけで
うっとりして
酔いがまわる
次の1合を
飲み干し
あたしの
アタマは
くるくるしだした
カウンターに
つっぷす
訳の分からぬ言葉を
喋りだしたあたしを
連れが 外に促す
降った雪が少し
残っている
ひんやりした空気
旅の開放感
あたしは
ひろい歩道の三角地帯に
大の字に寝そべった
うとうととなる
連れは
呆れながらも
あたしに手を貸す
痛っ!
ん・・・?
酔っ払いの
怪力は
連れの右腕に
青紫の跡を残した
「大の字の女
温泉地にて
凍死」
翌朝の新聞に
載った活字を
夢で
見ていた