十九歳
砂木

三年は居ると思ったのに一年で帰ってきて

高校を卒業して都会で寮生活をしながら働いて
帰りたくて故郷に帰ったけど 親は怒った

だからお前には無理だから行くなと言ったのに
どこまでも行くといって出て行ったくせに

夜汽車で帰って 朝 ご飯を食べながら
ずっと父母の説教をきいた
三月の雪はまだまだ消えず
ストーブをつけ こたつに入りながら
ただ 黙って 箸を動かした

これからどうするのか
頑張り通せなかった私の未来は
父母にとって厄介な重荷のようだった

働くから と かろうじて言って
ただただ 茶碗のご飯だけみていた
あんなに茶碗の底を見ていた事もない

よく平気で食べていられるな と言い
涙ぐんだのは 父母のほうだった

つられて泣きそうになったけど
残りのご飯を 口の中にかきこんでのみ込み
急いで二階の部屋に行ってドアを閉めた

働くって言ってるのに馬鹿にして
大袈裟なんだよ 馬鹿にするな
言い返す立場でもなく 結局泣いた

なんとか使って貰った会社でも
器用にこなせる事などひとつとしてなく
クビになれと言われてまでも それでも
現在にいたるまで 働いてこれたのは

働くと言ったら働くんだよ
働くと言って帰ってきたんだから働くんだよ

情けなさ過ぎて逆ギレした無一文の頃の
情けない怒りが 落ちる所まで落ちると
渦巻いて 生き場所を求めるから
怒った親になら いくらでも立ち向かえても
泣いてる親には へし折れてしまった

社内派遣などと言われるほど めまぐるしく変わる
不況にあわせた人事異動と仕事の見直しで
安心できる未来など 何もないけれど

どうせツカイステされるなら
リヨウできるだけリヨウさせて頂きましょう
はったりでも うそぶいて仕事を覚えて
リストラされる時には 力をつけてやめてやろう
泣くな 親め

勤続二十五年 親切に仕事を教えてくれた人々には
本当に感謝しつつ 闇の中 忘れられない灯りとして
何も信じない あの涙と 怒り以外は
泣くな 













自由詩 十九歳 Copyright 砂木 2011-01-16 10:13:37
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