横顔
真島正人


あなたの写真を見ていると
なぜか横顔しか
残っていない
小さなカフェに
行ったとき
突然歌手が
ジャズを歌った
ジョー・ウィリアムスに
ちょっと似た声で
いかにも偽者らしかった
そのときあなたはそういえば
壁とおしゃべりをしていたね
私はもっと
あなたに向かって
話しておけばよかった

あなたが壁とおしゃべりをしていると
私はあなたの影になり
あなたが頼んだ
カクテルを
ゆっくりとのどに流しこむ
胃が燃えるような
気分がしたよ
ジョー・ウィリアムスは
回転をして
何かを守るために消えてった
消えていったのは壁の奥
あなたはそこを見ていたの?
私はもっと
あなたに向かって
話しておけばよかった

ぐぅるり
ぐるり
ぐるぐると
夜空の星が見えてきた
夜空の星の
またたきに
夜の飛行士が
飛んでいた

あなたの写真を見ていると
なぜか横顔しか
残っていない
小さな海に
行ったとき
突然雨が
降り出した
私はあなたの傘になり
あなたは私を
引っ張った
私の体は伸びていき
もう人間ではなくなって
あなたは傘を
見ていたよ
あなたの口は
大きく動き
傘に向かって話してた
私はただの傘なので
言葉を返すことはできません
私はもっと
あなたに向かって
話しておけばよかった



自由詩 横顔 Copyright 真島正人 2011-01-16 00:43:41
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