火山島、炎の魚/対の影
石川敬大




 しわくちゃなので静かな紙面に舟を浮かべると
 宙の上で均衡がとれるように
 その点において
 静置する

 対になるその
 たゆたう舟の影も
 水底でしわをつくって静置するだろう
 青く透きとおった縞の
 水のなかでも
 魚は
 炎につつまれている

 生きものは
 みんな炎を吐瀉している

     *

 しわくちゃなので静かな海面から突出した
 こんなにも急峻な火山の島はかつてみたことがない
 肩先から炎をふきあげる
 空が
 水の静かさだ

 なぜメコン川で
 なぜ水草に、憎しみに似た悪意を感じるのか
 茶色く濁った澱みに棲息している
 尾鰭をふる
 ぼくは
 魚
 海面のてっぺんで霞む
 青く透きとおった水の夢をみている

 静置するのは縞をもつ舟の影
 しわくちゃなので静かな紙の裏面の舞台で
 ぼくの
 魚は
 鬼の形相をして
 泥の炎を吐瀉したりする






自由詩 火山島、炎の魚/対の影 Copyright 石川敬大 2011-01-15 10:28:16
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