ガロア再び
Giton

  .
真理を目の当たりに見ることは危険だ死すべき人
には許されぬ業わざ裸眼では目
が潰れてしまうという気高き Mont Blanc
万年氷の巓いただきに散る朝日を見るように
「数」の真理を見てしまうことは危険だった
  .
黒い大学帽を頭に載せてふんぞりかえる巨塔
の隠者たちが2世紀かけて惑いつつ狼狽うろた
つつ漸く覗き込んだ白熱の坩堝「数」の深奥
を何者にも魁けて一瞬にして理会した少年は天
  .
に召されてしまったのかもしれない砂漠の神
が家畜の最長子を生け贄に欲するように真理
は最初に己が姿を人に見せるときその不幸
で幸せな最初の魂を奪い取って行く
  .
「きみは扉を開けてしまったのか」燦然たる栄誉
には縁もなさそうな古ぼけた教師が少年の耳許
で囁く「ぼくはきみの歳で扉の前まで行って後ずさったが…」
「いいえぼくは方程式の答えを探していただけなのに…」
  .
「もの」の被いを剥ぎ取られた「数」の果てしない海
人の前には決して現さなかった彼らの宇宙気も
遠くなる秩序が入り乱れ沢山の環を造って揺れ
ていた世界が垣間見せたその深奥の姿
  .


自由詩 ガロア再び Copyright Giton 2011-01-14 03:06:50
notebook Home