『CRY OUT』
座一



空がある 夢がある 涙降る 星になる
“わたし”という小さな存在を置いて 自分の玄関から飛び出ない そのまま欄干に走り込まない
あのドブ交じりの川に流されない 私のクビにくっついている生暖かいものを今すぐほどけ

腹は減っているが 食べる気力はなく
認め合いたいだけの 原始的な力量で
私は命を燃やすのだけど
愛という食べ物は わたしにとって いつでも不美味

やさしいひとに殺される
夢ばかり見ている
近頃の 身元不明な薬指

どこまで行けば 受け付けられる?
社長令嬢が黒ガラスをたたき割って
私をたずねに来るのが ゴールドラッシュの前兆だ
美味しそうにつぶやく君の
耳元には 赤い貝殻
渋めのリップを ありったけのせて
これから毒を飲もうという表情

わたしは 病気です
そう言って
逃げない私
でも ねえ 時には
甘えたっていいと 思いません

パン生地だって しぼんじゃう
温かさが重要
こどもの身長で
こたつの中に 逃げ帰ってもいいでしょう

そうして丸まっていると
自分のことがよく分かる
この殻から
いつかは出なければ
ならないということ



主婦になって
おかあさんになる
純白を脱ぎ捨てたら
危なっかしい料理を作る
いろんな役目をまかされる 危なっかしい社会人になる
だからって 何でも人のせいにしないでくださいよ旦那さん
わたしはひどいにんげんなんだ
逃げ足だけは やけに早く
誰もかも置き去りにして 自分だけ助かろうって
どっかでいつもそんな赤いりんごが実っている
わたしが熟している仮定として
区役所の人たちが何とかしてくれる問題ですか

弱さっていう包丁をにぎって
道々の家々のドアを ノックする
何かしでかす手前の
あまからい においがする

もういいや
そうです どうにでもなって
わたしは わたしになってゆく
宿命なんてものは 早くくたばればいい
あんたなんか焙煎して
アメリカンコーヒーよりも だしが出ないから
こんな感情 宝石箱にぶち込んで
いっそさめざめ 泣いてやる






自由詩 『CRY OUT』 Copyright 座一 2011-01-13 23:56:35
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