ドップラー効果の向こう側に 消え去っていく
真島正人
塩なんかで何を清められるというのか
遠くの国ではそれは
死の恐怖を意味するのではないのか
恐ろしいもの、
震えのくるもの
餌付き
餓え
苦しみが
全部まとめて業火の
炎に焼かれる
火柱の先にいるのは、
人間だ
先端の技術だ
愛だ、
舌だ
愛なんて口先三寸
舌の味覚帯と結婚している
下のほうとも繋がりあるぞ
エッチな汁で
出来ている。
たまらない、たまらないな、
冬の空の下
どうってこともない風が吹いている
信じられないよ、って
つぶやいて
風が体の中に入り込んでくる
ここはなんてこともない、
球形の剥げた公園
都会の町並みは流動して
どんどんどんどん
違う地図を作った
一方でこの場所はいつまでも剥げたまま
何にもないままの火達磨だ
僕はここにしゃがみこんで
頭に浮かんでくることを考える
頭に、
浮かんでくることしか考えることが出来ない
頭に浮かんで
くることしか考えられないから
風が
凪いだことすら気がつかない
風が凪いだ
ことすら気がつかないから
全部順番に ドミノ倒しに なっていく
涙がこぼれた こぼれた涙から 海がこぼれた
こぼれた海から 人間の肉体がこぼれた こんどは
ぼろりと、
音を立ててだ
盾を作れ
早く、
盾だ、盾
盾おったてろ テロに 対抗するために
早く目を覚まして
すごいナックル
閉じ込めてみろ!
お前はホアン・ミロじゃない ただの薄汚れた少年だ
箱入り息子で ろくに部屋から出なくて 半ば引きこもりで
ゲームばっかりしていて ゲームの中で女の子を 架空に脱がすことだけは卓越していて
生糊のように生暖かい 申し訳ないものを飛び散らせ 六畳半の床をふき取る技能もないのだ
「石から虹がはみ出す様子を想像してみろ、それは些細な罪悪感や自己嫌悪を打ち砕くだろう。君が第一にやるべきことは、濁流の中に体を横たえてみること、ただそれだけだ。屋内に出来るだけたくさんの絵画を貼り付けろ、自分自身の部屋をリライトしてしまえ。書き換えは大事だよ、書き換えは、それは集合体の一部を操作してしまう。そうやって君は生まれたのだ、そうやって君は。」
大丈夫か、
大丈夫か、
応対しろと、
懐かしいアニメのような、
声が空から、降る
大丈夫だ、
大丈夫だ、
応対すると、
答えたのは絶対に、
自分ではなくて
大丈夫だ、
大丈夫だ、
応対する、
は
ドップラー効果の向こう側に 消え去っていく