二日酔い
……とある蛙
昨日さがし
今朝、起き抜けに
自分は右左が分からず
(ほんとに)
今朝、目覚めたとき
自分は表裏が分からず
自分の仕事が何なのか
すっかり惚けてしまって
濁った頭の中を
もがきながら泳ぎ
(ぼんやりと)
濁った意識の中でもがきながら
本当に自分の仕事を
思い出そうとしたが、
二日酔いの頭の中は
濁ったままで
いろいろ考えるのだが
結局面白くないことだけ
思い出してしまう
ので
も一度確認するために目をこらし
も一度確認するために耳をそばだて
さらに確認するために匂いを嗅ぐ
それらすべてを順繰りに
それらすべてを順繰りに
(繰り返すうちに)
僕は昨日を落としてしまった。
それに気づき困った僕は
本当に困った僕は
(間抜けにも)
自分を拾った者がいないか
小声で尋ねてみた
(誰に)
部屋の中に突然浮かんできた
役立たずの居候は
(なぜか)
部屋の中に浮かんでいる
役立たずの居候どもは
小声で知らないと呟き
(小声なのに)
そのつぶやきが
頭蓋骨の中で反響するので
理由はないが、
自分(きのうが)がなければ
訳もなく、
自分(きのうが)がなければ
外へ行けないと駄々をこねてみたが
出された朝飯が旨くて
(まったく、あ〜っ)
出された朝飯が旨くて
無言のまま朝飯を食べてしまい
ご飯を持ってきてくれた女に
昨日を拾ったか尋ねると
(それでも)
執拗に尋ねると
納豆ごはんを
口に詰め込まれ
しかも女は黙ったまま
すごい力で
女のものすごい力に驚きながら
そのまま外におっぽりだされた
結局外には行きたくなかったのだが、
本当に外に行きたくなかったのだが、
(自分の仕事を見つけるために)
ねばねばした口のままで、
とぼとぼとぼとぼ
朝日に向かって歩き出した。
(長い影を引き摺って)
外に出ると街中うるさくて
またノイズが頭蓋骨に反響し
ごちゃごちゃした喧噪の中にあって
通行人は皆忙しそうなふりをしてる
それでも昨日のことが気になり
(仕事のことが気になり)、
とても昨日のことが気になり
(仕事がのことが気になり)
聞こうとしても、今朝は昨日でないし
(仕事のことは)
聞けずじまいで
がんばって顔のない通行人や
店の中の顔のない店員に
昨日のことを尋ねたのだが
(仕事のことを尋ねたのだが)
彼らは顔がなくても
不機嫌そう
彼らは顔がないくせに
不機嫌そうな
(顔をして)
結局黙ったまま会釈する
(何も答えてくれず)
街中をとぼとぼと
(ただひたすら)
街中をとぼとぼと
歩いて行く
結局答えのない生活が
延々と続くので
答えのない宙吊りな言葉が
延々と続くようになり
だから二日酔いなのだと
やはり二日酔いなのだと
誰にも聞こえないように呟いて
また歩いている
また歩いている
※(かっこ)は適当に