水仙月の一月
小池房枝

シロカニペランラン金の盞
コンカニペランラン銀の台
いつからこの国に咲いていたのか君たち

室町の頃に記録があったというのは聞いたけど
数百年前からか

では数千年前には
数万年前には咲いていたか

一衣帯水の大陸から
東する水果てる東国まで海流に乗って
あるいは携えられて船で
いつ頃ここに来たのか君たち

間氷期と氷期と
海進と海退を繰り返す中で
君たちが自分で歩いて渡れる時期もあっただろう

寒くない気候の頃には
野尻湖の象たちやサーベルタイガーに
踏んづけられちゃってたりもしたのか

海際まで降りて来ていた高山植物たちに混ざって
一緒にお花畑していたこともあったか

それとも里山にだけ咲くのなら
もうずっと人々とともに
ユーラシアの西端から正倉院の宝物たちのように
シルクロードを遡って来たものか

単子葉植物だから
探せばプラントオパールや花粉化石が
見つかるのかもしれないけれど

いつから君たちは
君たちだったのだろう
スイセンよ
恒河沙那由他の花々よ

今は小雪の舞う中
日差しを浴びて
今は冬にだけ冷たい空気の中で


自由詩 水仙月の一月 Copyright 小池房枝 2011-01-12 23:34:16
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