あゆむひと
恋月 ぴの

ひと昔もふた昔も前みたいに霜柱立ったり
ちょっとした水溜りに氷張ったりするわけじゃないけど
それでも今どきの朝って起きるの辛かったりする

とりあえずは出かける場所があって
帰ってこれる場所があるのに
それでも、ついつい起きたくないなあって思ってしまう

ふとんのなかはぬくぬくあったかで
おまえのにおいがするなって彼氏に言われたけど
枕にしみこんだ涙の理由までは教えていない

起きなきゃいけない時間になってしまったんだよね

いっそこのまま起きなくてもよいのだと思い込もうとしても
結局はふとんのなかから這い出てしまうのだから
当たり前のことをもっと大切にしたいもの

それって平和ってこともそうなのかな

氷河期でも再来したかのような暗黒の空と
絶望に打ちひしがれた人々の嘆く声
失ってはじめてかけがえの無いものだったことに気付いて

つまらなく思えるものほど大切なんだよね

朝ごはん食べなくなってどのくらいになるんだろう
目覚ましひとつじゃ足らないくらい当たり前になってしまってるけど

そろそろ出かけないとね

最小限のお化粧道具と読みかけの文庫本をバッグに押し込み
行ってきますと一人暮らしの小さな部屋に鍵かけた




自由詩 あゆむひと Copyright 恋月 ぴの 2011-01-10 17:10:16
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