味わう
花キリン

味わう

苦味潰した味を味わう。そんな顔を持った者は知っているが、味があったとは。
例えば、食卓のテーブルの隅にこぼれ落ちて死臭がするほどに放置されていた味とか、三日も口を聞かないで酸っぱく凍りついた時間のような味とか。
そんな隠し味なのだろうか。

巧妙に仕掛けられた味。
味への誘いがあっても遠慮してきた。苦手な味だと、向かい合う前に体が硬直し始めるから、折れ曲がった指で一滴を救い上げてゆっくりと舌に転がしてみる。
そんな気配りは全くない。

味に堪能したとは、よほどの相性なのだろう。
苦味潰した味とは、究極の味だと笑いながら話していたが、嫌味だと気がつかないところにも味がある。死臭がしたり、酸っぱく凍りついたり、どこの家々にもこのような味はある。
それでも仕事の苦味だけは
持ち込みたくないものだ。


自由詩 味わう Copyright 花キリン 2011-01-08 08:27:48
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