さよなら、後藤さん。
緋月 衣瑠香

客電(#60、70、80代)、カットアウト

あなた 言ったわね
もう二度とお礼は言わんって
だから信じていたの
こっちから一方的に言いまくってやるって

舞台(#0)、フェードイン

舞台の上に立つ裸足
ほわほわの泡を編んでつくったスカート
紫のようなピンクのスパンコール
そこから伸びる透き通った白い腕
大きく黒いリボンが邪魔をする
見えてしまった細い手首の傷

舞台、カットアウト、即座のフラッシュ

眩しい
でもこれを逃したらあなたはもう見えなくなってしまうの

舞台(#0)、カットイン

舞台から飛び出して人の上を泳ぐ
転がるのではなく歩くように
あなたはいつもそうするの
それが綺麗で綺麗で永遠であってほしい

でも あなたはもう違うの

あなた 言ったわね
僕は嘘吐きやでって
やっぱり嘘吐き
たくさんのありがとうを言ったのは誰?

あなた そして わたし

さようならって言葉がいたかった
心臓を突き刺すあなたの音がいたかった
だから 泣いたの
だから 泣いたの?

あなたはいつも頭で泣く
赤い涙を流すの

眩しかったのはあなた
ずっとずっと眩しかった
セーラー服を着ていたときからずっと
わかっていた
私じゃあなたにはなれない
あなたみたいな女の子になるには壊れなきゃいけないんだって
私が知らないうちにセーラー服を脱ぎ捨てた
そのときから
なんとなく考えていたの

舞台、クロスフェード(#0→#70代)

手を叩いた
出ておいでって
まだまだ一緒に遊びたいんだよ
遊び足りないんだよ
遊んでっていったのはあなたでしょ
遊ぼうよ
かくれんぼなんてつまらないよ

舞台、クロスフェード(#70代→#0)

女が叫ぶ
往生際が悪い女です
セーラー服を着ている これは夢?
往生際が悪いのはあなた そして 私
大好きだから仕方ないの

なんで今日は頭だけじゃなくて
目から透明な涙を流すの
透明に近いあなたがどんどん見えなくなっていく
私の目は腐ってる

大嘘吐き
あなた その涙は本当でしょ
嘘なんかじゃないのよ
この腐った目から流れるものも本物

舞台、カットアウト

そんなあんたを一番愛してる

客電、フェードイン

そのゼラの色なんて覚えてないよ
あほんだらぼけかす



自由詩 さよなら、後藤さん。 Copyright 緋月 衣瑠香 2011-01-06 19:28:59
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