WE あるいは 接続の魔術
真島正人
先が尖っているので
さらに研ぎ澄ませて
接続しろ
差込口は
広げておけ
僕たちは
友達だ
だから
君の肌が冷たくないように
心まで閉じてしまわぬように
先は
氷に浸して
尖らせておく
もっと
さらに
奥へ
奥の部屋へ
そしてやがては
偏在を詠う
詠うことができる日まで
※
「私たち」は
ほかの言語で
「WE」と書く
そこにある「WE」は
陽だまりの子猫のように
やわらかくて重い
子猫の肉体の中に
入っている鉛が
廃品回収車と
接続される
陽だまりが瓦解して
「私たち」の
明日が始まる
クリームソーダを
よく飲め
そして分厚い本を
汗を流して読め
※
「どちらにも、共通する事柄は?」
と
ありふれた質問状が届く
そのときには神妙な顔で
「解けてひとつになりやすいこと」
と
答える
手にはもちろん、表面張力と
幾何学の専門書を
持つ
ずっと子供のころ
どこかの公園で
人を待っていることがあった
その人はブランコに乗って
すごいスピードで回転し
そのうちに
家に帰っていった
※
接続した先が
すべて同じ言葉を唱えるので
友人関係が怖くなり
逃げ出したというなら
それは半分は正しいし
半分は
誤解している
結局のところ研ぎ澄まし方が
足りなかったのだと
思わなければならない
君は
君の先をさらに鋭く尖らせて
もっと奥へと差し込んでみろ
そうすれば
その先が発酵する
発酵とは
とても大切なことだ
僕たちを
助け
僕たちを変化させ
このような僕たちを
作り上げる
発酵がなければ
僕たちは
もっと違った生き物として
生きていただろう
※
ところで
今日は公園の
ベンチが
とても、暖かい
冬とは思えない
日差し
うとうととしていると
浮浪者まがいの
格好をした
軍隊が
やってきて
楽しそうな顔で
Molly Darlingを
奏でだした
僕が目を凝らしてじっと見ていると
彼らが手に持ったコートが
日差しに焼かれて
アイスクリームみたいに
とろけていった
彼らも
眠かったようで
楽器を
弾きながら
順次、
眠っていった
むしろ
うとうととしていた僕よりも
先に
眠りの中で、すべての別在は接続されてひとつだ