朝と声
木立 悟





雪に沈んだ境界を越え
ひとつの足跡が響いている
野と原を野と原へつなぎながら
冬のむらさきは照らされてゆく


ひもとかれ
ただそのままの土が冷え
空へ 息を吹きかける
その合い間を
雨が来ては去る


おとなしく
肩を濡らし
乾くまで
凪の陽を浴びる
青が青になる前に
止まる時間


轟と鳴り
業と呼び
引き返し引き返し
繰り返す
風が風の
臓をくすぐる


曇や雪に隠れた器
ずっとむらさきを呑みつづけ
飛びたつ足のひとつひとつに
ひとつの響きをそそぎつづける


歩むもののかたわらに
光は今も沈んでいる
錆びた境を左目に見て
枝の層から枝の層へと
銀粉の筒を立ててゆく


ひとつの冬がふたつになり
器を持たないほうの手をとり
野と原と野に 野と原と野に 
足跡の境を描いてゆく




















自由詩 朝と声 Copyright 木立 悟 2011-01-01 22:24:33
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