狼煙
木立 悟



もうずっと長い間
止まったままの時計に向かって
話しかけてきたような気がする
まぶしい午後の光のなかで
ずっとずっと独りで



引き出しが外れて飛び出して
つぎつぎと重なり そびえ立つ
引き出しのなかはひくひくと
うごめくようにかがやいている



焦げくさいにおいはなくならない
どこまでもどこまでもついてくる
慣れていくしかないのだろう
燃えては消える自分自身に



空を見上げて星を呑めば
恐れる心は少しなくなる
消えかけた道を歩くと
消えかけた崖が現われ
霧の音に揺れ動いている



身体から煙が立ち昇り
霧の源へと消えてゆく
伝えるものもなく
伝わることもない狼煙のように
崖の上に立ちつくし
遠い光の時計を見つめつづける







未詩・独白 狼煙 Copyright 木立 悟 2004-10-29 13:16:46
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
ノート