飛沫
……とある蛙

先の見えないトンネルを抜けると
そこは渓谷に面した崖で
数十段の階段が川辺まで
雨で光り流れ危険な美しさを見せていた。
階段の先には
溶結凝灰岩(ようけつぎょうかいがんWelded tuff)の
千畳敷と呼ばれる河原が広がり
河原の先すぐに
岩の裂け目に落下し、
九〇〇万年の昔から
白い飛沫を上げる滝が
カーテンのように広がる。

雨降りの中、初老の夫婦は娘と共に
こわごわと滝壺を覗き
その奇観をメモリーに収める。
何万年の時と共に完成されつつあるその風景は
まだ滝を上流に押し上げるという変化を
ほんの僅かづつ繰り返す。
ほんの一瞬の虫のような一生しか持たない
人間の理解を越えて
滝はあざ笑うように好き勝手な飛沫を空に撒き散らす
それを浴びる事自体地球のエネルギーのおすそ分けを受けることなのだ。
謙虚におすそ分けを受けるべきだ。
謙虚に


自由詩 飛沫 Copyright ……とある蛙 2011-01-01 15:12:23
notebook Home 戻る