冷たい白でも
砂木

りんご畑の中にある家は
白い雪にくるまれて
ここから見えるのは

車庫の屋根の雪下ろしは
小学生の時の楽しみだった
冬休みともなれば一階を埋め尽くす積雪に
よじのぼり一人前にスコップを
屋根の上の雪っこに突き刺し
滑り止めの金具をさがしては掘り
屋根より突き出た雪を先に落として
足場を決めつつ少しづつ降ろした

雪降ろしが楽しかったわけではないが
車一台しか入らない車庫は子供でも大丈夫
降ろし終えて私の一番好きだった事は

スコップを屋根から 意気揚揚と投げ捨て
思いっきり 飛び降りた
雪も降る 私も
ずぼっと 体は白い雪に突き刺さり
屋根から落ちた硬い雪は危険もあるから
そこいらへんは勘でさけ
みつかると親には怒られ
弟が真似をするだろうと
いや 弟もすでに屋根の上だ

降ろした雪で小さなスキー場を作り
途中 くり抜いてジャンプ台にし
ミニスキー ミニボード
畑には雪のかまくらを二つ作り
下を掘って トンネルでつないだ

白く白く どこまでも白い冬
ここから見えるのは もうここからしか見えない冬

飛び降りて 楽しかった柔らかな雪の中
暖かな白い雪


自由詩 冷たい白でも Copyright 砂木 2011-01-01 14:26:34
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