背もたれ
番田 


ここには誰もいなかった
道を 歩いて 通り過ぎていく
誰が 自分であることなど 自分に 思うだろうか
木の葉である 自分自身を そこで 思うのだろう
そうして 杖をつき 次の場所に 向かっていく


そんなものだろうと 思う
雪の 舞い降りた 白い ホームで
今日も 電車を 待つ
その 手を こすり合わせた
自分である 人間である ということすらなく
いつも 考えあぐねていた
遠くにゆらぐものを 私は 見た


眠りに落ちていく
遠い世界のどこかで


流れる風を歩いた
いったい私は何をしてきたのだろう


池の中に見えた模様を見た
景色の中に生み出された色や形を


投げたフリスビーで切り裂きながら
赤い稜線を見た


誰もいない カラオケボックスで
細長い フライドポテトを つまみながら
幻想のような 思いを 巡らせた
私は そこで マイクを持ち 立っていた
自分が そこで スターである ということもなく



正月の 電車に 乗りながら
君の 考えていることは 何だろう
それは 私には 何も 確かではないのだが
こうしているだけで 幸せに思える



自由詩 背もたれ Copyright 番田  2011-01-01 02:04:37
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