大きな森
ふるる

大きな森の
地面に降りた
耳をすますと
聴こえるのは新しい年の風

さて、街の写真館では
カメラが売られていた
フィルムもそのまま
何が写っているのかは
謎のまま

さて、飛行機の座席の下に
ガラスのビーズがひとつぶあった
去年からあって今まで
奇跡的に見過ごされてきた

さて、スーパーの精肉売り場で
女の子がパックされた肉を
指でつついていた
お母さんにみつかって怒られるまで
けっこう長い時間

さて、次の問題を書こうと目をあげたら
もう消されていた

さて、タクシーの運転手が
海のにおいをかいだ気がした
海は車中にはないので
記憶が再生されただけ

さて、ベランダに干した傘は
突風で空へ
雲の間へ
それから
大きな森の木にひっかかりながら
地面に降り
しばらくは子リスが雨をしのいだり
タヌキが何だろうと近寄ってみたりしただろう
という希望

さて、海や森はもういいかな
では街だ
建物の中だ
階段のてっぺん
ベッドの中
窓枠
ホテルのロビー
ホテルって豪華なところはあちこち
つるつるぴかぴかに磨かれて
まあ、水面みたいさ
風のない
リカちゃんハウス
つるつるはよいこと

とりあえず道路は
舗装されていたほうがいいよ
自転車なんかガタガタしちゃって乗れたもんじゃないから

さて、
希望は口にせず
胸にしまっておこう

またあの子転んでる


自由詩 大きな森 Copyright ふるる 2011-01-01 00:31:33
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