いくつもの嘘を隠していた
ayano



「久しぶり」

「うん」



実家に帰ったら、従姉妹がいた。年下の俺は小さい頃から彼女と一緒に過ごしていた。毎年会っているものの、彼女の成長具合というか大人になる加減があきらかに女性的で、男として俺は彼女が綺麗になるのを遠くから見ていた。昔は従姉妹が結婚できないことを知らなかったから、こころから貴女に恋をしていても、何も言われなかった。でも、二十歳越え三十路越え互いに独身となると流石に不安になってくるってものだ。



「お前、恋人とかいないの?」

「恋人がいないお前には言われたく無い」

「俺みたいに仕事が恋人です、とか嫌だろ」

「嫌に決まってる。」



「それなら、」

「別に私は恋人がいないとは言って無いでしょう」

「は」



恋人がいるんだ。去年似たような会話をしたときは、きっぱり彼氏はいないと答えていたのに。アラサーにして純粋な恋を、愛を育んでいることでしょうよ。潔癖な彼女に手を伸ばして汚す訳にはいかない。として、こうやって同じ距離感を保つことも難しい。





「まあ、恋人がいるとも言って無いんだけれどね」

「どっちだよ」

「私ね、やっぱりお前が好きなんだ」



やっぱり、。お互い好きあっているのに、どうして結婚できない?付き合えない?手を繋げない?疑問符に溢れかえったけれど踏み潰し、身内じゃ結婚できないこと知ってんだろと冷たく吐いてしまった。



「でも、俺もお前が好きだ」



何故こんなにも、収まりがつかないのか。身内というだけの淡い関係。きっと彼女を押し倒したら何より俺が後悔する。彼女はそ知らぬふりで笑うかもしれないけれど。でも、今はこのまま、新しい年の始まりを、祝福することにしよう。身内で結婚できるところへいきたい。



いくつもの嘘を隠していた


散文(批評随筆小説等) いくつもの嘘を隠していた Copyright ayano 2010-12-31 18:30:51
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